635 直列共振回路の過渡応答理論
直列共振回路の過渡応答特性を確認する回路を以下に示す.
https://gyazo.com/c1a2f8eba8f058f906425ca96581fd3f
図635.1直列共振回路の過渡応答測定回路
■回路方程式
図635.1の直列共振回路の回路方程式は
$ v_1 = r'i + L\frac{di}{dt} + v_2\ ,\ C\frac{dv_2}{dt} = i (635.1式)
である.これを整理して$ v_1(t \geq 0) = E_0であることを用いると,微分方程式は,
$ \frac{d^2v_2}{dt^2} + \frac{\omega_0}{Q_0}\frac{dv_2}{dt} + {\omega_0}^2v_2 = {\omega_0}^2E_0……Qの定義(3) (635.2式)
ここで,
$ Q_0 = \frac{\omega_0L}{r'} = \frac{1}{\omega_0Cr'} = \sqrt{\frac{L}{C}}\frac{1}{r'} \ , \ \omega_0 = \frac{1}{\sqrt{LC}} (635.3式)
となる. この式は非常に重要! この微分方程式の一般解は,同方程式に$ e^{\lambda t}を代入して得られる特性方程式の根
$ \lambda _{1}, \lambda_{2} = -\frac{\omega_0}{2Q_0} \pm j\omega_0\sqrt{1-\frac{1}{4{Q_0}^2}} \ \ ( Q_0 \neq \frac{1}{2} )
から求まる基本解$ e^{\lambda_{1}t}, e^{\lambda_{2}t} の線形結合と特別解の和として表される.
係数は$ t=0での初期条件$ v_2=0,\ dv_2/dt=0を満たすように定めればよい.
この解は次のように場合分けされる.
a. $ r' < 2\sqrt{\frac{L}{C}} すなわち Q_0 > \frac{1}{2}の場合は振動的になる.
$ Q_0値が大きくなると減衰項が小さくなり,かつ振動項の角周波数は$ \omega_0に近づいていく.
b. $ r' > 2\sqrt{\frac{L}{C}} すなわち Q_0 < \frac{1}{2}の場合は非振動的である.
c. $ r' = 2\sqrt{\frac{L}{C}} すなわち Q_0 = \frac{1}{2}の場合は振動もせず最も速やかに定常状態に落ち着く
※検流計において重要な臨界制動の状態である.
■$ Qの定義その(3)
この定義による$ Q値の意味は,コイルやコンデンサが持つリアクタンス成分の抵抗成分$ r'に対する比による,質の良さを表す尺度である.
共振回路の$ Q値は周波数によって変化する.その中で,その回路の共振角周波数$ \omega_0での$ Q値は一般に記号$ Q_0で表され,その回路の特徴量として用いられる.
■$ LCR回路の時定数
$ RC回路で導出した$ \tauは,$ LCR回路においても同様に考えることができる.
ただしこの場合は入力信号全体の電圧ではなく,立ち上がり/立下りなど,急峻に変化する部分に生じる振動の振幅の変化である.(変化直後に振動が現れる)
$ 振幅 v=\exp (-\frac{t}{\tau })においてt=\tau の時,v = e^{-1} \fallingdotseq 0.367879....(635.4式)
これはつまり,振動振幅が最初の最大振幅から0.368倍になった時刻が$ \tauだということである.図635.2 に入力信号立ち上がり時の振動の様子を示す.
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図635.2 過渡現象の包絡線と角周波数
■コイルの内部抵抗$ r'
コイルの交流抵抗$ r'は,通常のテスタでは測定できない.
※LCRメータと呼ばれる測定器で測定することができるが,周波数が固定(多くは$ 1kHz)なため,$ \omega_0での値を示すわけではない
また,厳密には$ r'はコイルに独立な値ではなく回路全体の$ L,C,R成分を含めた値であり,$ \tauに依存している.
逆に言えば,$ \tauがわかると,下式に示す$ \tau,L,r'の理論的関係から$ r'を求めることができる.
$ \tau \equiv \frac{2Q_0}{\omega_0} = \frac{2L}{r'}(635.5式)
※例えば,右側の等式を変形すると$ Q, \omega, Lから$ r'を算出できる.
$ \frac{r'}{2L} = \frac{\omega_0}{2Q_0},$ r'=\frac{\omega_0L}{Q_0} (635.6式)
【検討課題635】振動条件の解)
$ Q_0=1/2のとき,過渡応答微分方程式の解を求めなさい.
【参考】LC過渡応答実験
以上.
2024/4/8